古池の蛙は何匹?~短歌や俳句を英語で説明

英語で日本紹介

大河ドラマ「光る君へ」では短歌を詠むシーンが度々登場します。
今回は、日本の伝統的な詩歌である、短歌や俳句を英語で説明してみましょう。

短歌は貴族のたしなみ

短歌は日本で最も歴史の古い詩歌です。
起源は飛鳥時代まで遡り、当初は天皇から貴族、農民まで、どんな身分の人も詠んでいました。それらを集めた日本最古の歌集が万葉集です。

Tanka is the oldest form of poetry in Japan.
短歌は日本で一番古い詩歌の形式です。
※詩の形式やジャンルはpoetry、一つ一つの詩はpoemです。

The oldest collection of tanka called Manyoshu was compiled in the 8th century.
万葉集という最古の歌集は8世紀に編纂されました。

Tanka is written in a 5-7-5-7-7 syllable pattern.
短歌は五七五七七の音節で書かれます(詠まれます)。

Many tanka express one’s deep feelings and impressions.
多くの短歌は人の深い感情や感動を表現します。

In the Heian period, exchanging tanka was quite common among aristocrats to express their love.
平安時代は、貴族の間では愛を表現するために短歌をおくり合うことが一般的でした。

恋愛の歌は多く、百人一首の中でも43首は恋の歌なのよ。
でもさ、誤解を招いたら大変だから、書き手も読み手も気を付けないとだよね。
そうね。けっこうストレートに気持ちを表現している短歌も多いのよ。

世界で一番短い詩歌-俳句

俳句の起源は室町時代の連歌です。はじめの五七五を一人が詠み、次の人が七七を詠み、次の人がその続きを詠むといった言葉の遊びでした。

もともとは風流でしたが、江戸時代に滑稽な言葉遊びとなり(俳諧連歌)、さらに最初の五七五(発句)だけを独立して詠むようになりました。

そこに松尾芭蕉が、「わびさび」といった雅な世界観を取り入れ、芸術として確立させます。明治時代には正岡子規が名称を「俳句」と改め、日本の代表的な文芸のひとつとなりました。

Haiku is the shortest form of poetry in the world.
俳句は世界で最も短い詩歌の形式です。

Haiku is written in a 5-7-5 syllable pattern.
俳句は五七五の音節パターンで書かれます。

Haiku must contain a seasonal word called kigo.
俳句は、季語という季節を表す言葉を入れなくてはいけません。

天気や花、鳥や食べ物など5,000以上の季語があるのよ。
そんなにたくさんあるの?
そうなのよ。ここでクイズね。「秋の夜」と「夜の秋」は、どの季節の季語だかわかる?
ん?違いがわからないな。どっちも秋じゃないの?
答えは「秋の夜」は秋、「夜の秋」は夏なのよ。夜の秋は、夏の終わりごろ、まだ昼間は暑いけれど、夜はだんだん涼しくなって秋を感じられることを表現しているの。
なるほど!季語一つでも深いなあ。

短歌は恋愛の歌が多くありますが、俳句は自然や行事を描写しているものが多く、感情を表現する言葉は通常含まれません。

Many haiku depict nature or seasonal events.
多くの俳句は、自然や季節ごとの行事を描写します。

They don’t use the words to express poet’s feelings.
詠み手の感情を表現する言葉は使いません。

Readers fully use their imagination.
読み手は想像力を存分に使います。

古池の蛙は何匹?

上述のように、俳句は短い詩の中で、詠む人が情景を想像します。そのため解釈は人によって変わるものです。よく比較されるのが、松尾芭蕉の有名な句、「古池や蛙飛びこむ水の音」です。

蛙!僕のことだね。

日本文化の研究で有名なお二人、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)氏とドナルド・キーン氏が英訳したものを見てみましょう。

Old pond ― frogs jumped in ― sound of water.(ラフカディオ・ハーン訳)

The ancient pond  A frog leaps in  The sound of the water.(ドナルド・キーン訳)

どこが大きく違うかわかるかしら?frogの所に注目してみて。
ん?frogsとfrogだ。
そう。ラフカディオ・ハーン氏は複数のカエルがチャポンチャポンチャポンと飛び込んだのに対し、ドナルド・キーン氏は一匹のカエルがチャッポンと飛び込んだと感じたのね。
たしかにどっちもありうるよね。うーん、僕は一匹かな。静かな池に入って、のんびり泳ぎたいな。

 

短歌も俳句も、字数が制限されているからこそ、詠み手は言葉を慎重に選び、読み手は最大限に想像力を働かせる…大変面白みのある世界ですね。

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